平成14年(2002)

天皇陛下 https://archive.fo/A3t3

小泉総理の北朝鮮訪問により,拉致事件の一端が明らかとなり,その後5人の拉致被害者が帰国したことは大きな出来事でした。長年にわたる拉致被害者並びにその家族の苦しみや悲しみは,いかばかりであったかと察しています。


皇后が北朝鮮拉致事件に触れたのは,今年の誕生日に当たっての記者会からの質問の中に,サッカーのワールドカップ日朝首脳会談などが今年行われたことを挙げ,この1年の気持ちを聞かせてほしいという質問があったからです。

私どもには,富山県高岡市で起こった拉致未遂事件という恐ろしい記憶があり,皇后が述べている「なぜ自分たちが自分たち共同社会の出来事としてこの人々の不在をもっと強く意識し続けられなかったのだろうか」という思いは,私にも非常に分かります。


皇后陛下 http://archive.fo/1ZkgS

皇后の役割の変化ということが折々に言われますが,私はその都度,明治の開国期に,激しい時代の変化の中で,皇后としての役割をお果たしになった昭憲皇太后のお上を思わずにはいられません。

皇室における赤十字との関係も明治の時代に作られました。

欧化思想とそれに抗する思想との渦巻く中で,日本の伝統を守りつつ,広く世界に御目を向けられた昭憲皇太后の御時代に,近代の皇后のあり方の基本が定まり,その後,貞明皇后香淳皇后がそれぞれの時代の要請にこたえ,さらに沢山の新しい役割をお果たしになりました。どの時代にも皇后様方のお上に,歴代初めての体験がおありになり,近年では,香淳皇后の,皇后のお立場での外国御訪問が,皇室史上例のない画期的なことでございました。先の時代を歩まれた皇后様方のお上を思いつつ,私にも時の変化に耐える力と,変化の中で判断を誤らぬ力が与えられるよう,いつも祈っています。


秋篠宮同妃両殿下 https://archive.fo/E4wsZ